SPECIAL DIALOGUE

特別対談・前編

生前から描く「自分らしい葬儀」の作り方

「人はいつか死を迎えるのに、 自分の葬儀について事前に話し合う人は少ない」 と語る田村淳氏と、
創業112年の歴史を持つ葬儀会社の野杁社長による特別対談。

家族葬や無宗教葬が増加し、 故人の希望に沿ったオーダーメイドの葬儀が求められる今、 生前から葬儀について考える重要性が増しています。 故人の思いを叶え、 遺族の負担を減らすための準備や、 これからの新しいお別れの形について田村さんと野杁社長が語ります。 前編・後編に分けてお届けします。

対談風景

タレント/全葬連フューネラルアンバサダー

株式会社のいり代表取締役 社長

タレント/
全葬連フューネラルアンバサダー

株式会社のいり代表取締役 社長

特別対談・前編:目次

  • 2025年11月30日(日)に、 一宮市尾西市民会館にて行われた 「のいりプレミアクラブ15周年記念」 において、 全葬連フューネラルアンバサダーの田村淳さんを迎え特別講演会を行いました。この対談は、 講演会の後に会場内で行われたものをまとめたものです。

葬儀社は 「フラっと」 行く場所?生前の関係構築が思いを叶える。

田村 僕の母の葬儀はだいぶオーダーメイドだったんですが、自分で相談して決めていた人で、生前から 「葬儀会社のスタッフとどう関係を構築するかが重要だ」 とよく言っていました。 亡くなる前から関係づくりをした方がいいと思うんですが、 葬儀会社には、 フラっと行っていいんですよね?

野杁 はい、 ぜひフラッと来ていただきたいです。 私どもは創業百十二年になりますが、 葬儀は人生に一度きりで取り返しがつかないからこそ、 故人様の思いを叶えることを第一に考えています。

田村 でも亡くなった後からでは、 希望をどこまで叶えられるかわからない。 だから生前に話しておくことが重要なんですよね。 ただ、 今日の講演で700人くらいいた中でも、 やっぱり自分の葬儀について家族で話し合っている人はむちゃくちゃ少なかったです。 葬儀社としてはどう捉えていますか?

野杁 私たちも 「気軽に話に来てほしい」 とお伝えしてはいるんですが、 一般の方からすると葬儀社は敷居が高いようです。 「ぼったくられるのでは」 「まだ先のことだから考えたくない」 と敬遠されがちで、 いざという時に準備ができていないケースが多いのが実情です。

田村 僕の場合は、 母が看護師で幼い頃から 「人はいつか死ぬ」 ということを教わって育ちました。 「死ぬまで生きたように生きなさい」 という母の教えがあって、 その生きた先には人生のおしまいが来るんだと想像できたんですよね。 それに加えて、 親戚が葬儀屋さんということもあり、 葬儀会社に対するハードルが低いんです。 でも普通はなかなか行けないですよね。 気軽に来てもらうための取り組みは何かあるんですか?

お葬式相談会「家族葬セミナー」の様子
お葬式相談会「家族葬セミナー」の様子
定期開催している人形供養
定期開催している人形供養

野杁 いきなり事前相談に来てと言っても難しいので、 地域の町おこしイベントや 「人形供養」 などを開催しています。 自分たちが大事にしたお人形をご供養しましょうというイベントで集まっていただいた方に、 「今、 考えてらっしゃることや、 お写真はありますか?」 とお声がけをして、 少しずつ相談に乗っていく形をとっています。

田村 なるほど。 今日の講演後にも 「ああいう場がないと自分の死や葬儀について話そうなんて思わなかった」 という声がありました。 気軽に行ける場所としてのイベント作りは、 自分の死について考えるきっかけとして本当に大切ですね。

無宗教葬や家族葬が急増。 自由だからこそ求められる 「事前の準備」。

田村 これから葬儀の形もどんどん変わっていくと思うんですよね。 だから、 自分がどうしたいかがより求められる、 なのに葬儀への要望を何も残していないと、 残された側は悩みながら準備しなければなりません。葬儀会社としてはどう寄り添っているんですか?

野杁 今の業界全体として、 葬儀は 「家族だけ」 で行うケースや、 宗教観を持たない 「無宗教」 の方が非常に増えています。 ある意味自由にできるのですが、 事前に準備をされていない方が多いのが実情です。 写真1つとっても、 お手元になくて運転免許の写真を伸ばすなどしていますね。

田村 なるほど。 無宗教の葬儀って、 具体的にどんなことをするんですか?

野杁 故人様が好きだった音楽や映像を流したり、 参加したご家族で思い出を話したりします。 ただ、日本人はそういった場で話すのが苦手な方も多く、 「ではお寺さんを呼びますか?」 となってしまうこともあります。 ですので、 もし無宗教の葬儀にするのであれば、 前もって相談していただきたいですね。 事前相談があれば 「こんなパターンがありますよ」 と提示できますので。

ホールやオフィスで、個別に事前相談が可能
ホールやオフィスで、個別に事前相談が可能

田村 うちの義理の祖父が亡くなった時も無宗教で、「みんなで話してください」 っていうスタイルでした。 でも、慣れていないと誰も喋り出さない。 あの時は、たまたまおしゃべりな僕と、話し好きな義父もいたので、話を回すことはできましたけど。 みんながみんな 「話そうぜ」 って一気に話すのは難しいから、会話を促すファシリテーションが重要で、今後はそういう進行も葬儀会社に頼むことが増えそうですね。

野杁 はい、 そこは一生懸命頑張ります。 私どももファシリテーションをして、 しっかりサポートさせていただきます。

アメリカの 「葬儀大学」 で学んだ、 日米の死生観の違い。

エンバーミングの様子(イメージ)
エンバーミングの様子(イメージ)

田村 僕が面白いなと思ったのは、 社長がアメリカで葬儀を学ばれていることです。 そもそも 「葬儀大学」 というのがあることを知らなかったんですけど、 どういう大学なんですか?

野杁 私が学んだのはアメリカの短大で、 向こうはご遺体の医学的な処置からご遺族の心のケアまで、 「理系」 と 「文系」 の分野を同時に学ぶような仕組みになっているんです。

田村 なるほど、 葬儀に関わるすべてを総合的に学ぶということですね。 理系の方は具体的にどんなことをするんですか?

野杁 化学とか生物学とか解剖学などをやって、 ご遺体に 「エンバーミング」 という処置を施す技術を学びます。

田村 エンバーミング、 初めて聞きました。

野杁 簡単に言うとご遺体を保存していく技術で、 薬品を動脈から全身に行き渡らせて腐敗を止めたりします。 例えば、 内側から滅菌できるので、 コロナで亡くなった方でも普通に手で触れてお別れができるようになったり、 癌で痩せられた方もふっくらと修復できたり、 そうした技術がアメリカには昔からありまして、 それを学ぶのが理系の方です。

田村 そうなんですね。 文系の方は何を学ぶんですか?

野杁 大切な人が亡くなった後に、 残された人はどうやって悲しみから立ち直っていくのかというプロセスなど心理学的なことを学んだり、 宗教学であったり、 あとは棺の構造や会計などを学びます。 向こうは小さな葬儀社さんが地元にたくさんあって、 エンバーミングも自分たちでやる人が多いので、 その養成学校のようなところで2年間学びました。

田村 アメリカの死生観と日本の死生観って、 すごく違うような気がしますけど、 実際はどうでしたか?

野杁 アメリカの葬儀はアットホームで、 葬儀に行くと、 皆さんが故人との思い出を話していました。 それと、 牧師さんや神父さんが 「死後の世界」 を非常にわかりやすく話してくれることも多くありましたね。

田村 そっか。 アメリカはコミュニケーションを取るお別れで、 そこに違いがあるんですね。

(後編へつづく)

田村淳氏との対談風景

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